アースデイやんばる実行委員長・浦崎公子インタビュー【後編】

earthdayyanbaru

2016年03月12日 22:20

「人のせいにしない生き方」を。その刺激を与える、地球の日イベント
 インタビュー、写真、文:田中えり

【前編】はこちら↓
http://earthdayyanbaru.ti-da.net/e8477712.html

「子供って宝だし、最近の子供の可能性ってすごいんですよ。光のエネルギーが全然違うというか。それに私たちがこれからできる教育って、型にはめることはできないと思うんですよね。その子の可能性を引き出す形の教育でしかなくなる。それも人間は色々なタイプがいるので、その多様性を認めていくための教育。そうすると子供たちは自分の軸がしっかりすると思うんですよ」



公子さんの視野は、身近なことから地球規模のこと、そして未来のことと、幅広い。有機的に繋がっていることとはいえ、これら全てをイベントで表現するのは並大抵のことでないはずだ。プライベートではまだ手のかかる4人の子を持つ母であり、美容師の仕事は予約がいっぱいで休む暇などまるでない。そんな忙しい中でも、“アースデイやんばる”を開催するのには、理由がある。公子さんには「その人の素晴らしいところを引き出したい」という確固たる思いがあるからだ。

「引き出すとか、そんな偉そうなことを言える立場じゃないけど、その人の可能性が見たいというか。やっぱり1人ひとりの可能性ってすごく大きいんですよ。でもその人はわかっていなかったり。自分のことが一番わからないと思うんで、周りが感じる必要があると思うんですね。で、その人に気づかせてあげるというか」

その思いは、美容師の仕事でも貫かれている。公子さんはお客それぞれの毛の流れや、伸びが早い場所、毛の生え方や色の変化などを見て、そのお客の心身の状態を言い当ててしまう。それに加えて、そのお客の素晴らしいところもわかってしまうのだ。

「やっぱり人が好きなんですよね。人の素敵な所を見つけると、すぐその人のこと好きになっちゃう(笑)。どんな人にもその人にしかないものってやっぱりあるんですよね。どんなに似てる人でも同じものってないんです。全てその人独特。だからそれぞれの人が、本当に素晴らしいって思うんです」



その言葉通り、美容院のお客に対して、決して否定することや説教をすることはない。全ての人の気持ちを丁寧に掬ってくれるのだ。様々な価値観を持つ人がいるのに、全てを受け入れる寛容さがある。その理由を公子さんは、「これまで様々な人を演じてきたから、様々な人の気持ちがわかる」と言う。

「私ね、小さい時からずっと否定されて生きてきたから、コンプレックスの塊で。だから色んな人になりたかったんですよ。色んな人になるために、自分をいくらでも作り変えてきたんですよね」
公子さんは、小学校3年の時に「人生の旅に出た」のだそうだ。人はなぜ生まれてきたのか、宗教本や哲学書を読み漁り、小学校卒業までには家にあったそれらの本を全て読んだという。

「神様はいると思ってたけど、自分は神様に認めてもらっていない、だからこんなに苦労するんだって。カルマみたいなのを背負ってて、そのカルマを解消するために徳積みをしなきゃいけない、徳積みをするために一生懸命やってきた感じでしたね。小学校3年生くらいのときから毎朝5時に起きて、みんなの朝食作ったりして、おりこうさんだったのに、両親から全然褒められないわけですよ。学校の成績はオールAを取ってきたりするのに、父からは『女は頭じゃない、愛嬌だ』とか言われて、全然認めてもらえなかった。こんなに努力してるのに報われないって、プツッと切れたのが中学生のとき。ダーッと坂を転げ落ちるように、悪の世界へ行ったんです。暴走族には入るわ、刑務所入るギリギリのところまでいくわ。高校にも入ったんですけど、結局1年で辞めてしまって。それから美容師の世界に入ったんですね。その時仲良くしていた警察のオジサンに地元を離れなさいと言われて、実家のある長崎から、知り合いのツテで佐賀の美容院に、とりあえず放り込まれたんです(笑)」

15歳で飛び込んだ美容師の世界。先輩にいじめられながらも、住み込みで頑張った。



「根性だけはあったので、6年くらい下積みやった後、21の時ですね、大きな所に引き抜かれて、お店を1軒任されたんですね。それからパリコレとかミラノコレクションに入っていくようになって。もうその土地で私を知らない人はいないくらい有名になっていました。頂点に行ったんで、天狗でしたね。けど頂点にいるときほど、心は苦しかったです。人が求めるような自分にどんどん作り変えていって、ある意味自分がなくなってしまっていて。東京にもお店を出していたので、東京と行ったり来たりで、忙しくて体調も壊しましたね」

そんな時にご主人と出会い、電撃結婚。ご主人の地元である沖縄は名護にやって来た。ここで待ち受けていたのが、まさかのドン底。

「美容師として内地でやってたことが沖縄では全く通用しなかったんです。これまで通り、何かアドバイスしたりすると、『何か売りつけられそうで嫌だ』と言われたり。すっかり自信を失ってしまって、ハサミを握れなくなった時期がありましたね」

でも、色々な経験したからこそ、得たものも大きい。

「上がりもしたし、下がりもしたし、自分を徹底的に否定したこともあるし。でもそういう経験をしてきたから、今は色んな人の気持ちがわかるんですよね。今になってみると、悪いことは1つもなかったと思えます」
アップダウンの激しい半生を送ってきた公子さん。小さい頃から抱えていたコンプレックスが完全に解消したのは、意外にもたった7年前のことという。



「父が亡くなって実家の片付けをしている時、15,6の時から書いていた日記や10歳の時から書き溜めていたメモ帳が出てきたんですよ。そしたらね、自分の中身とか、感じていることとか、今と何も変わってなかったんです。それがすっごいショックで。なぜって、自分はコンプレックスの塊で自分はダメだと思っていたから、素晴らしい人になるために、自分を作り変えて作り変えて、こんなに努力して頑張ってきたのに、全てにおいてよくなっているはずなのにって。だけど、その時に気づいたんですね。自分は変わる必要はなかったんだって。そのままでよかったんだって。自分はダメだダメだって思い過ぎて、自分で自分を苦しめていただけだったんだって。衝撃でしたね。そこで初めてちゃんと腑に落ちた。青い鳥は家にいたみたいな感じですよ(笑)」

コンプレックスは、克服するものではない。「それも自分」と受け入れることができて初めて、解消されるものなのかもしれない。青い鳥は、ちゃんと自分の中にいる。全ての人は輝かしい光の存在なのだ。それは誰しもがきっと気づけること。
「気づいて欲しくて皆さんに刺激を与えるんです。刺激の一つとして、とりあえず実行委員は皆、仮装します。私は不思議の国のアリスの赤の女王ね。頭がこんな大きくて、唇がちょこっとあって、眉毛がこんな上にある人(笑)! その格好して毒舌で会場を回ろうかと思っているんですよ。『お前ら、人のせいにするなーっ』て。やっぱり非日常を味わうのがお祭りだし、イベントじゃないですか。それに主催する側が楽しくないとダメでしょ。その楽しさがみんなに伝わるからね?(笑)」

地球のこと、自分のことを思い行動する2日間。実行委員のメンバーは強烈なカンフル剤を用意してくれている。「なんだか楽しそう!」。そんな軽い気持ちで“アースデイやんばる”に足を運べば、帰る頃には、沢山のお土産が両手に溢れているに違いない。

〈完〉